英語サイトの改善というと、翻訳の質や英文のチェックに意識が向きがちですが、実はそれ以前の段階——翻訳する前の日本語の原文そのものに、つまずきの原因が潜んでいることが少なくありません。
日本語として自然で、丁寧で、美しい文章であっても、それが「翻訳しにくい日本語」である場合、どれだけ優秀な翻訳者や翻訳ツールを使っても、英語では意味が曖昧になったり、伝えたいニュアンスが抜け落ちてしまいます。この記事では、旅館サイトの日本語文章によくある「つまずきパターン」と、翻訳しやすい日本語への直し方を紹介します。
つまずきパターン1:主語が省略されている
日本語は主語がなくても文が成立する言語です。「ご到着後、お部屋にご案内いたします」という文章は日本語として自然ですが、英語に直訳しようとすると「誰が」案内するのかが曖昧になりがちです。
直し方: 翻訳前に「スタッフが、ご到着後にお部屋にご案内いたします」のように、主語を補った日本語に書き換えておくと、翻訳の精度が大きく上がります。
つまずきパターン2:曖昧な婉曲表現・断り方
日本語では、直接的な断りを避け、「難しいかもしれません」「検討させていただきます」のような婉曲表現がよく使われます。これは日本語話者同士では「実質的に断られている」と理解されますが、そのまま英語に訳すと「まだ可能性がある」と誤解されることがあります。
直し方: 翻訳前に、実際の可否をはっきりさせた日本語に直しておきましょう。「難しいかもしれません」ではなく、「基本的にはお受けできません(例外的に対応できる場合は個別にご相談ください)」のように、実際の結論を明確にしてから翻訳します。
つまずきパターン3:感覚的・擬音語的な表現
「さっぱりとした温泉」「ほっとするひととき」「趣のある佇まい」といった、日本語特有の感覚的な表現は、直訳すると意味が伝わりにくかったり、不自然な英語になったりします。
直し方: 感覚的な表現をそのまま訳そうとせず、「なぜそう感じるのか」という具体的な理由に置き換えます。例えば「さっぱりとした温泉」であれば、泉質(硫黄泉など)や温度、効能といった具体的な情報に言い換えることで、翻訳後も意味が明確に伝わります。
つまずきパターン4:一文に複数の情報が詰め込まれている
日本語の文章、特にフォーマルな案内文では、一文が長くなりがちです。「チェックインは15時からとなっておりますが、お荷物のみ先にお預かりすることも可能ですので、ご到着が早まる場合はフロントまでご連絡くださいませ」のような文は、情報量が多く、英語に訳すと非常に読みにくい長文になってしまいます。
直し方: 翻訳前に、情報ごとに文を分割しておきましょう。「チェックインは15時からです。」「お荷物は先にお預かりできます。」「早めに到着する場合は、フロントにご連絡ください。」のように分けることで、翻訳後も簡潔でわかりやすい英語になります。
つまずきパターン5:文化的前提を説明なしに使っている
「スタッフ一同、心よりお待ちしております」「ごゆっくりお過ごしくださいませ」といった、日本のおもてなし文化に根ざした定型表現は、直訳すると欧米の旅行者にとって意味が伝わりにくかったり、大げさに感じられたりすることがあります。
直し方: すべてを直訳する必要はありません。同じ気持ちを伝える、英語圏で自然な表現(例:"We look forward to welcoming you" や "We hope you enjoy your stay")に置き換えるという発想への切り替えが必要です。
翻訳しやすい日本語を書くための3つの基本ルール
上記のパターンに共通するのは、「日本語として自然であることと、翻訳しやすいことは必ずしも一致しない」という点です。英語ページのもとになる日本語文章を書く際は、以下を意識してみてください。
- 主語・目的語を省略せず、誰が何をするのかを明確にする
- 一文を短く区切り、ひとつの文にひとつの情報だけを入れる
- 感覚的・比喩的な表現は、具体的な事実や理由に置き換える
まとめ:翻訳の前に、日本語を見直す
英語サイトの質を上げるためには、翻訳作業そのものだけでなく、その前段階である日本語原文の書き方を見直すことも同じくらい重要です。特に、これから新しく英語ページを作る、あるいは既存の英語ページを改善する予定がある場合は、翻訳を依頼する前に、まず日本語の原文を「翻訳しやすい日本語」に整えることから始めてみることをおすすめします。
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